※18歳未満の方はご遠慮下さい。
  本気でやってるだけです

 




背後から押さえつけた小さな体が、必死に声を殺していることを知っている。

行為のはじめに、舌を噛まぬようにとはめた猿轡代わりの手拭いが、いつの間にかはずれ、含んだ唾液に重みを増している。それでも口から悲鳴を零すものかと布の端に噛みつく姿に、痛々しさと愛しさを覚えた。
埋め込まれた楔が膨張することに気がついたのか、一層こわばる背中に、伝わるはずなどない思いを込めて唇を寄せた。

小さな背中は汗に濡れ、気化熱により体温を下げるのか触れる温度はひやりと冷たい。だが、それさえも兼続を一層熱くさせる。

幾度も、繰り返し背中に口付を受けることで体が疼くのか、兼続の下で体が身じろぐ。ふつふつとこみ上げる快楽は許しがたいことであっても、それを堪えていられるほど体は嘘をついていられないのだろう。
口端を上げるようにして冷淡な笑みを浮かべ、背後を射るように睨めつけてくる小さな竜と対峙する。生理的な涙が独眼を濡らし、まだ成長しきれていない幼さを残した輪郭からえもいわれぬ凄艶さを感じ背筋を震わした。

徐に腰を動かせば、内壁が絡み付くようにして兼続を奥へと誘う。ゆったりとした動きはもはや拷問に近いのか、政宗は額を敷布に擦りつけ緩やかな波に耐えている。うっすらとした月明かりが差し込むばかりの部屋に、静寂が響く。押さえつけた相手の、浅い呼吸音だけが兼続の耳をくすぐる。
首を伸ばして赤く染まる耳殻を舐め上げれば、快楽に耐える体が小さく弾み、中に入った兼続を締め上げる。その衝撃に腹の中で形をはっきりと感じてしまったのか、抑えていた悲鳴が小さく零れた。慌てて敷布に噛みつくも、一度漏れた声は殺しきれず、くぐもった悲鳴が兼続の動きに合わせて落ちていく。

情事の最中、普段の舌戦を思わせるような会話はなく、むしろ寡黙といったほうがいいほどだ。荒くなる呼吸と、肉と肉とがぶつかる音と、混ざり合う液体の立てる音と。嬌声が漏れたことなど一切ない。
男同士であるのだから、嬌声を求めるのは間違っているのだろう。だがそれはなによりも甘い響きに違いない。


ゆったりとした動きが急激に激しくなり、息が詰まる。吸い込んだ空気に、ひゅ、と喉が鳴る。
抉るように兼続が前後に動かせば、政宗の体はその動きに合わせるように揺れる。
その度に上がりそうになる悲鳴を抑えるため、口元にのばされた手を取られ、敷布に手首を抑えつけられた。そんなことをされたことは、二人の間にこのような関係が派生してから一度としてなかったため、怒りよりも困惑を政宗は感じ、覆いかぶさった兼続を見上げた。
その間にも兼続の動きが止まることはなく、異議を唱えようと口を開いた政宗の喉から悲鳴が飛び出た。
その一点を掠める度、鼻にかかった声がこぼれる。敷布を噛み続けていた頤からは次第に力が抜け始め、声を殺そうにも口を閉じることができない。
息が、苦しい。目の裏が白く弾けた。

繋がった部分から広がる熱に、兼続が果てたことを知る。脚の間から残滓が伝う感覚に眉を顰めるが、それを拭うほどの気力も無かった。
ふと、背中に触れる気配に息をつく。それは確かに行為の最中にも触れたものだ。果てたばかりの敏感な身体では小さな刺激さえ愛撫に思える。本格的に欲に溺れる前にと背後を振り向けば、予想以上に近くにいた姿に目を見開く。それは近すぎて表情もはっきりと窺えない。

こんなことは今まで一度たりとも無かった。背中に口付けが落とされることも、声を上げて啼かされることも。
触れるだけの口付をすること、も。

口付けをしたことがないわけではない。しかしそれは、あくまでも行為の一環。互いの快楽を深めるため、もしくは引きずり出すためだけの行為であるはずだった。
だが、これはどうだ。触れるようにしてすぐに離れた唇は、まるで行為の後で火照った身体を労わるようであった。
近付いていた顔が離れれば、互いの表情も窺える。しかし、そこにいるのは常の二人ではなく。


自然と引き合う唇が、真実だけを知っていた。














無自覚か確信犯か

兼→←政

兼政はいがみ合って何ぼ。

 

20110528(初出 20080731)