※捏造九州
※２当時なので旦那不在。
※白夜さん宅設定の子犬系豊久在住。
※豊久が�ｧ千代を伯母上とか呼んでます。

 

今日も今日とて、火花は散った。
その間で、慌てる甥っ子の姿もまた同じ。

きっかけなどはとうに忘れているだろう二人の舌戦は止まることを知らない。
久しぶりに会ったはずであるのに――己の知らないところで会っていたのかもしれないが、言い争いをやめない二人の姿に、そろそろ胃の辺りに針が刺さるような痛みを覚える。
そもそも互いの戦略について議論していたはずが、なぜか焼き魚の話になり、さらに肉じゃがの具について口論していた。

「だから、おかしいだろう。肉じゃがにには糸こんにゃくだ！」
「小娘の舌がおかしいのであろう。肉じゃがには白滝よ」

正直、どうでもいい。

原料が同じである糸こんにゃくと白滝の違いなんて、固めてから糸状にするか、糸状にしてから固めるかだ。
しかも最近ではそれさえはっきりしておらず、地域による呼称の違いとなっている。

いまでこそ口論というよりも、食ってかかる�ｧ千代を義弘があしらっているといったところだが、これがだんだんとヒートアップしていけば豊久の敬愛する伯父上が吼えることを、経験上知っている。
そうすれば気丈な態度を見せる伯母上――もとい、�ｧ千代の瞳の奥にうっすらとだが傷ついた影がみえることも。

廊下に、拳を叩きつける音がする。
義弘の決して長くない尾が切れたのだろう。建物が揺れる。
豊久がモノローグに浸っている間に事態は急激に悪化していたらしい。

唇を噛みしめ、それでも決して義弘から視線を外さない�ｧ千代の目には、傷ついた色が。
そのまま何も言わずに踵を返そうとする�ｧ千代の袂が、ひらりとゆれる。
その背中をみて、苛烈な視線を瞼で覆い、義弘も�ｧ千代と言葉を交わしたその場を立ち去ろうとした。

「あ、」

きゅ。

普段から袴を履き、鮮やかな着物とは無縁の格好をするはずである�ｧ千代の、鮮やかな柄の入った袂がさみしかった。
箪笥の肥やしになっていたものを、わざわざ何日も前から干しているのに何気ない顔で袖を通した、義弘の袂がさみしかった。

「・・・・け、喧嘩は、だめです」

こんなにお互いを意識しているのがはた目から見てもわかるというのに、会えば憎まれ口を聞いてしまう二人を。

「・・・・とよひさ、」
「伯父上、伯母上。ちゃんと仲直りしてください」

放っておいたりしたら、男が廃るってものだ。

「・・・・伯母上ではない、立花だ。」

豊久につかまれた、自分と義弘と袂を交互に見て、�ｧ千代は感情を隠しきれずに小さく困ったように呟いた。

豊久だって男児ですから！

伯父夫婦と甥っ子←
豊久っていうよりも義弘⇔�ｧ千代＋豊久

しらたきとはるさめに関しては、執筆当時ぐぐりました。

 

20110614(初出 20080821)