※リーマン家三
※また、本編では性的描写を含むため、18歳未満の方はご遠慮ください










多分に漏れず、営業部一部は多忙を極めていた。
直に盆休みである。小売店はともかく、工場も流通も止まるため、それまでに済ませなければならない業務が山のように積み上げられており、さらに、休み明けに待つ新製品の発売に向けて正直部内のほとんどが休みどころではない。
しかし、嘆いたところで工場も流通も止まることに変わりは無く。それぞれ盆に向けて、書類や顧客と戦いを繰り広げていた。文字通り、汗水を垂らして。

外周りから戻り、フロアの扉を開けるとむわっとした空気が家康の体を包み込む。
「…暑いなぁ」
思わず言葉が口からこぼれていた。
はっきりとしない天気が数週間続き、ようやく迎えた梅雨明けに、胸中喜びもあった。しかし、直射日光を浴びつつコンクリートの道を歩けばじりじりと肌が焼かれて、今まで以上に体力を消耗する。
店舗や取引先を周り、這々の体で会社に戻れば、迎え入れるのはキンと冷えた空気、ではなく。ほとんど冷房の効いていないような高温の空気であった。
「やめてくださいよう、考えないようにしてるのにー」
「すまない、つい」
間延びしたような情けない声で訴えてきたのは、比較的若手の社員だった。
頭の天辺から汗を流し、それをタオルで拭いながら団扇を必死に仰いでいる。その社員に隣の席から注意をする社員ですら声に張りがない。
それに苦笑いを浮かべて返しつつ、書類と資料の積み上げられた自分の机に戻り、承認が必要になる書類の多さに辟易しつつもそれを表情に出さず椅子に腰を下ろす。家康自身の体重に加え、疲労も加わった重みに椅子が音を立てた。

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(三成が家族に愛されパート)

いつの間にかテーブルの上には刑部が腕を奮った料理が並んでおり、それを見て吉継は今日二人が帰ってくることを知っていたのだと気付く。恨みがましい視線を向けるが、素知らぬ顔で汁物を碗によそっていた。
大人五人で囲んでもまだ余裕のあるテーブルいっぱいに料理が並びきったところで、三成が持参したビールがグラスに開けられる。家に上がってすぐに冷蔵庫に移したので程良く冷えたようだ。
「秀吉と僕の帰国と、三成君の帰省を祝して、乾杯!」
半兵衛が乾杯の音頭をとり、自らの帰国を含んだ祝杯をあげる。グラスをガチャリとぶつけ合いそれを口に運ぼうとするが、三成の手にも確かにあったものはあっさり取り上げられ、烏龍茶とすり替えられる。
「刑部…」
「主は先日まで胃を壊していたであろう。今宵はそれで十分よ」
「そうだよ三成君。君体調崩してたんだから、今日は烏龍茶で我慢なさい」
吉継だけでなく、幼子を諭すような半兵衛の言葉に口を噤む。特別ビールを飲みたかったわけではないが、折角の酒宴で口にしないのは気が引けた。だが、ここは半兵衛の言葉に大人しく従うことにする。
「毎年体調を崩していたから気になっていたが、どうやら今年はそれほど酷くはなかったようだな」
寡黙なこの家の主に言葉を掛けられ、思わず声が裏返る
「はっ!秀吉さまのお気を煩わせるまでのこともございません」
「よくいうよ、今回だってどうせ家康君に言われるまで不摂生を繰り返してたんでしょう、まったく」
見てきたかのようにいう半兵衛の言葉が事実とそう変わらないので否定できるはずもなく、そのまま小さくなる。
「いつも言ってるでしょう不摂生は駄目だって」
「三成、」
くどくどと続きそうになる半兵衛の説教を秀吉が遮る。
「親が子のことで気を病むことなどあたりまえなのだ」
「そうだぞ、こいつらの心配なんて病気みたいなもんだ」
口に含んだまま官兵衛が横合いから茶々をいれるので、行儀が悪い!と横から半兵衛の細い指が官兵衛の耳を引っ張っていった。
しかしできるならその心配の種は少ない方が良い、と言って秀吉の大きな掌が三成に伸ばされ、頭の上にそっと乗せられる。ぬくもりがじんわりと伝わってくると同時に、幸福で胸が苦しくなり緩んだ顔を見られないようにと俯いた。
それを眺めている大人たちは大層幸せそうに微笑んでいたのだが、もちろん三成は気付かなかった。
「さ、普段不摂生ばかりの三成君。今日は吉継君が腕によりをかけて胃に優しいメニューを作ってくれたんだから、ガンガン食べなさい」
言われてみれば、酒宴の席であるというのに随分とさっぱりとしたメニューが並んでいる。隣に腰掛けた吉継をちらりと見遣れば、どこかに視線を流して三成と目が合わないようにしている。さり気なく用意したはずだったのに半兵衛に暴露されて多少居心地が悪いのだろう。
「刑部…」
「なに、我も連日の暑さに辟易していただけのことよ」
そう言って、居心地の悪さを誤魔化すように三成の取り皿に三成が好きそうなおかずを次々に放り込んでくる。それを見た半兵衛まで真似るので、あっという間に皿はいっぱいいっぱいになってしまった。


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(家康と三成が愛し愛されパート)

胸倉を掴み上げていた指は解かれ、そのまま腕が逞しい首に回る。触れ合ったシャツ越しに体温が伝わる。その久しぶりの温度が心地良い。
きつく抱きしめられながら、家康はエアコンのリモコンに手を伸ばす。三成が帰って来ないと思っていたから、設定温度を低めにしていた。あまりエアコンの冷気に強くない三成のために普段は高めに設定してある。その温度まで戻そうとしたところ、鎖骨辺りに顔を埋めた三成がそのままでいいとその手を止める。
「このままだと寒いだろう」
「いい」
首筋を擽る銀糸に指を滑らせながら問うが、間髪入れずに却下される。
「しかし」
「すぐに熱くなるから、いい」
三成の言葉に、掌に触れる銀糸の感触を満喫していた動きが止まる。
確かめるように視線をやると、勢いよく三成が顔を上げたせいで危うくぶつかるところであった。
「貴様が、あつくしろ」


唇の表面だけを触れ合わせるだけの口付けだけで離れていく顔を追いかけ、こちらから仕掛ける。
思えば随分と久しぶりの行為で、加減が分からない。
そういえば、と、三成の首筋を舐め上げれば汗の味が舌に広がる。家康はシャワーを浴びたが、三成は帰宅したばかりで浴びていない。首筋を舐められたことでようやく思い至ったのか、慌てて体を起して風呂場に逃げようとする体を、体勢を入れ替えてソファーに押さえつけた。いまさら待ったはなしである。
口付の最中に上から一つ一つワイシャツのボタンを外し、胸の前を広げた。いくつか下のボタンは着いたままだったが、耐えきれずに胸の飾りに歯を立てた。刺激に震えるそこが愛おしい。
今度はゆっくりと周囲から囲みこむように舌を這わせて口に含んだ。
小さく悲鳴があがり、手首の下で抗う力が弱まる。
「ひぅ…ッん…」
不自然に途切れる声に、顔を上げれば唇を噛み締めて声を押し殺している。それを宥めるようにと口付ける。歯を立てられた下唇は赤く色付き、必死であったことが伺える。
「ワシだけしか聞いていないのだから、別に構わんだろう」
「構う、に、決まって…る!」
この部屋は防音構造になっているため、いくらここで三成が泣こうが喚こうが音がもれることはない。それは入居を決める際のポイントでもあったので、双方とも既知の事実だが、それとこれとは別問題なのだろう。
苦笑いを浮かべて歯の跡が残る唇に舌先で触れる。下唇を挟み込むように口付れば、観念したように口が微かに開く。その隙間から舌を滑り込ませて喉の奥まで吸い上げる。苦しげに漏れる声すら家康を熱くした。
激し口付けで口の端から唾液が伝ってソファーに染みを付ける。顔を離してそれを目に留める頃にはすでに二人とも息が上がっていて、今更戻れないほどに下半身はその熱を訴えてきていた。互いにそれは痛いほどわかる。















三成が夏バテ起して帰省(徒歩圏内)したり、家康が寂しがったり(離れて数時間)するお話です。今回は、思う存分豊臣さんちのご両親と刑部と官兵衛が出張ります。家康、イキロ。

120810発行