※現代パラレル
※家康と三成の他に竹千代と佐吉がいます
これとかこれの流れです





彩り豊かな食材の飾られた素麺を机に置きながら、吉継は軽く笑いながら言った。
七夕の夜は、仕事を怠けた夫婦が引き裂かれ、一年に一度だけ会うことが認められた逢瀬の夜なのだ、と。
あまりに端的過ぎる、というか若干織姫と彦星に対して辛辣な気すらする。
それを大人しく聞いていた、というか目の前に置かれた食事に目がいって話半分だった竹千代がふいに顔を上げた。

「どうしてひこぼしは他の日にもおりひめに会いにいかないんだ」

さも不思議そううに尋ねる竹千代には少し早い話だったのかもしれないと、目を細めて自分の幼い頃の容姿によく似た顔をぼんやりと眺める。
部活でハードな運動をした後なので、正直胃液が出過ぎて辛い。さらに目の前に置かれた料理がまたうまそうでさらに辛い。

「たけちよは、さきちに会えないなら川なんかおよいでわたってみせるぞ!」
「さきちも、たけちよに会えないなら『てんてい』くらいざんめつしてやる!」

幼い二人は手を取り合って納得したように頷き合う。
その姿は実に微笑ましいが、佐吉の言葉が物騒だった気がしないでもないがそのあたりは後ほど三成に言いつけておこうと思う。
佐吉の発言は大体周囲の大人、ほぼ三成の影響が大きいのだからこのまま放置しては可愛い容姿で「斬首」「斬滅」と叫びだすようになってしまう。

吉継は相好を崩してさようか、なんて銀色と黒色の頭を撫でまわしているし、三成は話を聞いていないようで二人のやりとりを微笑ましいと思っているのかいつもよりわずかばかり頬が緩んでいて、家康の心も満たされる。

ただし、胃袋は満たされない。

お預けをされた犬の気分とはこんなものだろうかと、涙をのんだ。















さきちとたけちよ-たなばた

家康はお腹がすいて死にそうです。

 

20111008(初出20110708)